モンモデル TS-026 M1A2SEP エイブラムス TUSKI/TUSKII


2015年後半にモンモデルが「M1A2SEPを発売する」と宣言したとき、海外のネットの反応は冷ややかでした。
よく出来たドラゴンのキットと組みやすいタミヤのキットがあり「今さらエイブラムスは必要ない」という意見が多かったのです。
しかし、モンモデルから詳細な情報が提供され始めると、反応は驚きに変わり始めました「これは凄い」「エイブラムスってこんな構造になっていたのか」
圧倒的な情報量が凝縮されたキットである事が明らかになってきたのです。


厳密には、モンモデルのエイブラムスは、純粋な社内設計では無くデザインを「T-Rexスタジオ」に外注したものです。主任デザインのスン・リャン氏はかつてはモンモデルに在籍していたのですが、個人的な事情により退社。しかし「エイブラムスの模型を発売したい」という情熱は絶ちがたく、自らT-Rexスタジオを立ち上げて設計に挑んだのです。
彼は語ります。「簡単に組めるのは良い事だが、そのことだけを優先して1980年代の解像度に甘んじていて良いものだろうか?情報量が豊富で精密感があるが、組立は難しくない模型。それが私の目指すところだ」



彼は開発中のCGを順次ネットにアップしていきましたが、その情報量は凄まじいもので、殆どの市販の資料本でも語られていない、M1>M1A1>A1A2>M1A2SEPに至るエイブラムスのディティールの変遷、そしてエイブラムスのスカート取り付け位置は実は左右対称では無いことなど、徹底したリサーチが反映されていました。
モンモデルによるとリサーチに関しては優れたモデラーで軍隊経験もあるChris Mrosko氏とBrett Avants氏の協力を仰いだとのことです。
(この二人が監修した資料本はサボットパブリケーションから発売済み)
スン・リャン氏は「モンモデルはまだ新しいメーカーだ。でもこの数年で様々な経験を積んだ。このキットはこの経験の上に成り立っている」と語ります。このキットはまさに彼の言葉に偽りの無い、もの凄いキットに仕上がっています。


実際のパーツです。
このキット、箱の深さが半端ではないので、店頭で無闇に開けるのは止めた方が良いと思いますが、たぶんぱっと見ただけだと「あれっ、煽った割には普通じゃねえか」と感じるのでは無いかと思います。ひとつには、パーツ分割が極めて堅実であることが原因です。デザイナー氏の宣言通り、無駄な分割が控えられているので、ドラゴンのキットを開けたときに感じる「うっ、オレこれ組めるのか?」という圧迫感もありません。感覚としては「タミヤの新作だね。でもちょっと今回はパーツが多めかな?」と言う感じです。アクロバティックなスライド金型の投入もありません。また、プラの色選択もあるのでしょうが、なんとなく眠い感じのパーツが並んでいるのです。しかし、家に帰ってじっくり見るとじわじわこのキットの凄さが見えてきます。実は市販のキットの殆どはモールドに縦方向(立体方向)のデフォルメが入っています。これはリベットのような部分で顕著です。その方が一見メリハリがあり、初心者が塗装を厚塗りしてもモールドが埋まることがありません。ところが、このキットはそうしたディフォルメを殆ど掛けていません(おそらくまったく掛けていないと言った方が正しい)。このため、例えばTUSKII用のウロコ装甲板を固定しているリベットなど、肉眼では殆ど見えません。しかし、マクロレンズなどで撮影するとくっきりと繊細なモールドが見えてくるのです。また、.50口径機銃の給弾部ひとつ見ても、ここまで真面目に作ったキットはこれまでありませんでした。


キットはM1A2SEPに市街戦生存性向上キット(TUSK)を装備した状態を再現しています。TUSKは最初、側面を角形のブロックで覆っていました。しかし、イラクで遭遇した自己鍛造弾IED(EFPIED)には貫通されてしまう恐れがあり、鱗状の装甲を重ねづけして改良されました。これにより以前のものをTUSKI、改良されたものをTUSKIIと称するようになりました。キットではTUSKI、TUSKIIどちらも選択出来るようになっています。




TUSKの特徴である、キューポラ周りの防弾板はもちろん透明パーツとの組み合わせで再現されています。また、ガラスに貼られた金網はエッチング製です。エッチングの使い方も極めてまっとうで、金型代をけちってエッチングに逃げたと思わせる部分はまったくありません。


履帯は一見バラバラで組めそうにありませんが、履帯ピンとセンターガイドはランナーのままでひとまとめに治具に収まるようになっています。接着後にランナーを切り取ることで見た目より簡単に組めます。