サイバーホビー(緑箱) #3544 1/35 M48A3 Mod.B

2013/8/2 記述の幾つかに誤りが見つかりましたので訂正しました。

【実車について】
M48はアメリカの戦後第一世代に属する主力戦車です。米軍は大戦中に開発されたT26の改良型であるM46パットンの後継としてM47を開発しましたが、不満足な結果に終わり、パットンの名前をそのままに三代目として開発されました。90mm戦車砲(戦中モデルに比べると大きく性能改善されています)搭載という点は変更されていませんが、砲塔・車体とも鋳造で構成された車体、トーションバー式サスペンションなどはそれまでの路線を踏襲つつも丁寧に見直しが行われ、一新されました。お椀を伏せたような砲塔とT字型ブラストデフレクター、補助操縦手席を廃して車体中央に位置するようになった操縦手席など、一度見たら忘れない形をしています。A3はディーゼルエンジンに換装したタイプで、これにより航続距離が増加しました。Mod.Bはこれを更に改良したもので、外観上はリアパネルの尾灯が装甲板に覆われたことで識別できます。多くのM48が改良プログラムによってA3と同等の性能を持つように改造されました。M48A3 Mod.Bは他の型のM48と合わせてベトナム戦争に投入されましたが、キットが再現しているように、戦訓からキューポラの直下にビジョンブロックを搭載した個体も多く見られます。当初、北ベトナム軍の機甲戦力から考えて、当初はM48のような重量の重い主力戦車は活躍の場所が無いと考えられていました。しかし実際に戦ってみると、低強度紛争のはしりとも言える彼我の非対称性と過酷なジャングルでの戦闘では、M48の強靱な防御力と信頼性はおおいに有用であることが実証されました。90mm砲での直接支援は歩兵にとって心強い味方であり、乗員には「M48に乗っていれば生きて帰れる」とまで信頼されたのです。

M48はモノグラムとタミヤがそれぞれキット化していますが、どちらも「より格好良く見えるよう特徴をディフォルメする」ことが良き模型化の手段と考えられていた時期の製品です。この手法は一見良さそうに思われるのですが、現在のように価値観が多様化した時代では、ややもすると「デザイナーの美観の押しつけ」と受け取られることも多くなり、あまり歓迎されなくなりました。

ドラゴンのキットは「実物のもつラインをできる限り忠実に再現する」ことを第一義に考えられたキットです。この手法は一昔前は「そんなことは誰でも出来る」「おもしろみの無い手法」と言われてきました。しかし、実際にこの方法で模型化することは非常に綿密な取材と形状を客観的に把握するセンスが必要で、とても手間のかかる方法です。今回の設計者は同様のコンセプトで数々の名キットを送り出してきた高田氏とH3氏のコンビです。

この二人は実際に手を動かしているモデラーなので「組みやすさ」にも細心の注意が払われています。可能な限り部品の一体化が進められているのはもちろん、パーツの分割線などは完成すると極力見えないよう注意が払われています。場所によってはアクロバティックな分割方法が取り入れられており、「よくこんなこと思いつくよなあ」と言う事で組み立て最中も楽しめます(その分仮組はきちんとした方が良い)。
今回はエッチングパーツは一切含まれていないことも特徴です。エッチングは店頭で箱を開けたときキラキラ光り、金色に弱い日本人をレジに誘うには絶好の手段です。販売店としてはガッカリなのですが、モデラーからの視点では大いに歓迎すべきことだといえるでしょう。
部品数も例えば、ドラゴンのIV号戦車D型が1000近いパーツ数であるのに対し、200超と非常に良くまとまっています。ビジョンブロックやライト、レンジファインダーなどは透明部品です。

特徴である鋳造砲塔は多面抜きのスライド金型で抜かれており、ちょっと見た目には単純ながら実は複雑な形状をした鋳造砲塔を丁寧に再現しています。

サスペンションや足回りは従来のキットでは省略されていたり形が変えられていた部分を丁寧に再現しています。特に転輪のリム側面内側にある分割線と起動輪中央のセンターガイドを保持するディスクが正しく再現されたのは大きいと思います。各部に刻印された鋳造管理番号も繊細に再現されています。履帯はベルト式ですが、ご覧のように殆どの方にとっては十分な再現度を有しており、塗装・接着は普通のプラと同じく処理できます。長さもぴったりでした。

 

 

 

 

 

牽引ワイヤーの長さですが、キットの指示だとすこし短いようです。現物合わせをすることをお勧めします。
私の組んだ個体に入っていたワイヤーでは足りなくなってしまったので、手持ちのワイヤーを使用しています。