ドラゴン #3608 IDF M113

米軍のM113装甲兵員輸送車は総計で80,000両以上が運用されたベストセラーです。
世界各国で使用されましたが、中でもイスラエル国防軍(IDF)は6,000両以上を使用しました。
IDFがM113を導入したのは1963年で、第二次大戦型のハーフトラックを更新していきました。
このキットが再現しているのは1973年の第四次中東戦争当時のM113です。
導入から10年が経過し、IDFの運用形態に合わせてあちこち改造が施されています。
一番目立つのは、車体側面の荷物ラック。M113は車両固有の乗員2名に加え兵員11名を収容できましたが、この状態だとまさにすし詰めなので、背嚢や寝袋といった個人装備はこのラックに吊されました。

車体右側面にパイプのようなものがありますが、これは右上部にある排気管を延長して、下の方から排出するものです。おそらく、ディーゼルの排気煙や熱で目立つこと嫌ったものだと思われます。この他、車体後部の装備も米軍とは異なっています。
車体上部には、本来の.50口径機銃の他、FN-MAG機銃が2丁増設されています。これはIDFオリジナルのスイングアームに取り付けられています。

キットは車体内部も再現されています。単体作り込み派の方には物足りないでしょうが、情景に使う分には十分な出来です。


操縦席のメーターパネルはハッチを開けるとチョロ見えします。キットにはメーターのデカールも付属しています。


車体上部のFN-MAG機銃は非常に細かく出来ており、揺架のしまり具合を調節するハンドルまでパーツ化されています。


履帯は部分連結の式のNEOトラックです。ゴムパッドが別パーツなので一見面倒に見えますが、履帯がランナーに付いた状態でパッドを取り付ければ全部のパッドを取り付けるのに1時間掛かりません。パッドが一体になっている履帯をマスキングして塗り分けようとするとこれ以上の手間が掛かります。また、パッドは20枚余分が出ますので、すり減った様子、傷んだ様子など実験をする事も可能です。出来上がりは、ご覧のように連結可動履帯に遜色ないものです。


キットには荷物も付属します。塗装・接着可能な軟質素材で、もちろん市販のレジンパーツには適いませんが、十分な出来です。


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では、お楽しみの組立解説です。キットはトータルで350パーツ(しかもそのうち74個は履帯のパッド)なので、そんなに長いマラソンにはなりません。

まず、一コマ目。転輪のハブキャップを削り取って交換する指示が書いてありますが、これはあくまでオプションです。ネットで写真を見る限り、交換後の形状の方が多いようですが、交換前の個体も普通に存在します。見本では交換してみましたが、無理だと思えばやらなくて大丈夫です。

また一コマ目では、シャーシの後部を切り取る指示があります。これは、このキットのシャーシが、既に発売中の「ランス」のものを流用しているためです。ランスはM113系の派生車なので基本的に問題ないのですが、ランスは車体延長しており、切り取って元のサイズに戻す、と言うわけです。切断線に沿ってガイドがあるため、作業自体は難しくありませんが、切断面がリアパネルA15の接着面になるため、あまりエエカゲンにやっていると箱組みの時に車体の嵌合が上手くいかなくなるということになってしまいます。切断が終わったら車体パネルを仮組みで箱組みにし、合いをチェックすることをお勧めします。接着部分は完成すると殆ど見えないため「あちゃー、切りすぎた」みたいな場合でもプラバンでリカバリーできますから、ここで心折れないでください。

切断直後に誘導輪支持架A10を付けるよう指示がありますが、もちろんそんなことしちゃ駄目です。先述のA15にダボがあるのでA15取付後にA10を取り付けます。

3コマ目。ライト類は非常に良い雰囲気で精密に出来ています。ライトガードの取付向きが前後逆です。B33を最初に取り付けるとスムーズに組み上がると思います。M113は一番外側のライトのみ通常光のライトです。D19をサードパーティーのレンズパーツに換装するとぐっと良い感じになると思います。

4コマ目。A46/47はパネルの裏に取付用の隠し穴がありますが開口指示が漏れています。実はこのキットではこうした隠し穴開口指示が全部漏れていますので事前にチェックすることをお薦めします。特に車体側面のラックはクミセツだと芋付けするように見えますが、ちゃんと隠し穴があります。
隠し穴を真面目に設計したキットの設計者はこのクミセツを見て泣いていると思います。

ジェリカンラックはエッチングです。私は以下の手順で組みました。
本体(MA2)を折り曲げる。
中央の仕切り板MA5を接着する。
ジェリカンを接着する。
MA6と7はラックでは無く、ジェリカンに接着する。
接着剤が乾いたらベルトMA3を接着する。少し長めにしてくれていますので、現物合わせで長さを調節します。エッチングでは実感が出ないので、クミセツの切れ端と汎用バックルパーツに換えてしまった方がストレスが無いかもしれません。


5コマ目。ロングシートや中央シート台座B3の取付には隠し穴を開口する必要がありますが、全て指示が漏れています。
6コマ目。履帯のパーツ構成図は向かって左が前になります。
7コマ目。隠し穴の開口指示が全部漏れています。A31とB20の取り付け位置はここじゃ無い気がします。B20は操縦手シートの直後で位置はなるべく下。(操縦手用の消火器なので彼の手の届く範囲に収めます)A31ですが、実物はB37のすぐ上にラックがあり、その上に載っています。どちらも完成すると殆ど見えないためあまり神経質になる必要は無いと思います。
11コマ目。FN-MAGを設計したデザイナーは1/35の解像度限界に挑戦したようですが、彼のお遊びに付き合うかどうかは各自が判断された方が良いでしょう。「組めない」と思ったらパーツをゴミ箱に叩き込み、レジェンドのパーツに変えてしまうのもひとつの手です。個人的には、この設計者に遭う機会があったら、このパーツを渡し、20分以内に組めない場合、きちんと組めていない場合は、ぶん殴って、二度と設計ができないように手の骨を折ります。
12コマ目。気を付けてください。A13の取付にも隠し穴開口の必要があります。
13コマ目。おめでとう!最後のステップです。でもあなたはA22の取り付け穴が無いことに気づいて愕然とするでしょう。実はこの部分は実車でも結構アバウトで、付いている場所は、かなり個体差があります。クミセツの取り付け指示位置は標準的なポジションだと思います。

全体的な感想として、非常によく出来ているところも手を入れてやる必要があるところもあるキットで、万人向きではありません。
しかし「いやータミヤのキット簡単に組めたよ~」とか言っている輩の横に、綺麗に組み上がったこのキットをさりげなく置くのが格好いいオトナのモデラーだと思います。今回はSNSに途中写真を掲載しつつのんびり組んで3日でした。
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