サイバーホビー(緑箱) #6550 1/35 オストヴィント

【実車について】
オストヴィントは3.7cmFlaK43を搭載した対空戦車です。
ドイツ軍では、対空兵器として、発射速度が速く単位時間あたりの発射重量が大きい2cm機関砲と、一発あたりの威力が大きく、射程の長い3.7cm機関砲を併用して運用していました。戦争後半になると、航空機や対地ロケット弾の性能が向上し、射程の長い3.7cm砲の重要性が高まりました。

開戦当時、3.7cm機関砲は36型ないし、37型が使用されていましたが、オストヴィントは新型の43型を搭載しています。
3.7cmFlaK43はFlak37が発射の反動によるリコイルを行っていたのに対し、発射ガスを使用したリコイル式に改良され、信頼性が高まると共に、発射速度が一気に1.5倍に向上しました。しかも、重量は軽くなったと言う傑作対空機関砲です。

FlaK43を搭載した対空戦車としては既にメーベルワーゲンが配備されていましたが、戦闘中に操作員が剥き出しになってしまう点が問題とされ、全周を装甲板で覆った砲塔に収めたオストヴィントが計画されました。しかし、量産開始は終戦間際になってしまい、実車写真の極めて希な車両となっています。

【二種類の量産型】
オストヴィントは試作型は鮮明な写真が残されていますが、量産型はつい数年前までナゾに包まれてきました。しかし近年になって急速に研究が進み、実は二種類の量産型が存在したことがわかりました。

ドラゴンでは最新考証に基づき、1/35では初めて量産型を再現しました。 今回、ドラゴンから量産型についての考証コメントを頂き、公開しても良いとの許可を頂きましたのでここに掲載します。

まず、従来説で「量産型」と解説されてきたオストヴィント。
これは、車体の砲塔リング直径がティーガーIと同じサイズに拡大されています。クーゲルブリッツとの車体共通化計画から生まれました。砲塔位置自体も車体中央に移動し、無線手ハッチは操縦手ハッチの前端に揃うまで前方に移動しています。オストヴィントの砲塔リング径はIV号戦車と同じ物ですので、これはオストヴィントの為では無く、クーゲルブリッツの為に取られた措置です。しかし、結局クーゲルブリッツはハッチの前端を「ハ」の字に開いた専用車体を使うことになり、共通化計画は放棄されてしまいます。
共通化計画で生産された車体パーツ(一説には7両分)は全てオストヴィントが使用することになりました。 砲塔リング拡張型のオストヴィントが実際に何両完成したかは不明です。

これに対し、近年の研究でわかったのが、従来型のIV号戦車と同じ砲塔リング径(=従来型と同じタイプの車体天板)を使用した量産型の存在です。これは36-40両が生産されたと言われており、ドラゴンが今回キット化したのはこちらのタイプです。

ふたつの量産型のどちらを真の量産型と呼ぶべきか、今なお研究者の間で意見が分かれています。

前者のタイプも気になりますが、まずは生産数が多い方がキット化された事は、モデラーの自由度が高まる上で妥当な選択だと言えるでしょう。
キットの箱絵は、数年前に発注された物で、今では古くなってしまった考証に基づいているため、キットとはいくつかの部分で形状が異なります。

砲塔基部に三角の張り出しがあるのが量産型砲塔の特徴です。

砲塔と3.7cmFlaK43は新金型です。砲塔装甲板はドラゴンの誇る精密金型技術で極薄に成型されており、ほぼ実物通りの厚みになっています。フチを削ったり、エッチングに換える必要はまったくありません。

FlaK43はご覧の通り非常に高い密度感と精密感があるにもかかわらず、一体成型を巧みに使用しており、あっという間に完成します。
完成すると見えなくなってしまうディティールが多く残念です。

砲身は自由に角度を変えることが出来、照準器とも連動します。
地上戦闘時に開く、照準器前の装甲板は開状態と閉状態のパーツが付属しますので、器用な方は差し替え可能に改造しても良いでしょう。

【IV号戦車系列の生産簡易化】
終戦間際のIV号系列は、フォマーグ工場でIV号駆逐戦車(L/70(V))-所謂ラング-が、ニーベルンゲン工場でIV号戦車J型(戦車型)とL/70(A)-所謂ラング折衷型-が、ドイチェ・アイゼンベルケ工場でブルムベアが、クルップ・グルゾン工場でIV号突撃砲と対空戦車(含むオストヴィント)が生産されていました。

戦争後期のIV号系列は生産性を高めるため、様々な簡易化措置が執られました。例えば上部転輪を3個に減らしたり、形状も簡単にしたりと言った措置です。
一昔前まではIV号戦車の生産簡易化は一本化して説明され、あたかもどの工場でも同じ簡易化が図られて来たように語られてきました。しかし近年の研究では、ある工場では早い時期に導入されたが簡易措置が、他の工場では導入時期が遅かったり、あるいはとうとう導入されなかったりと言う事が起きている事が解ってきました。また、パーツの形状も工場ごとに微妙に異なる部分もあります。

今回のドラゴンのキットでは正確にクルップ工場製車体の特徴を再現するため、車体下部と車体上部の多くの部品が新規に起こされています。この辺は精密考証を誇るドラゴンらしいこだわりと言えるでしょう。
おかげで、資料を持っていないモデラーでも説明書通りに組むだけで最新研究に基づいた正確な模型を手にすることが出来ます。

この辺りについて、 自分なりにリサーチを進めたい方には、グランドパワー2011年2月号を参考にされることをオススメします。この号では第一級の研究者が同じ工場で生産されていたIV号突撃砲を非常に丁寧に考証しています。オストヴィントを組む事はもちろん、IV号戦車系列の工場ごとの簡易化への取り組みについて理解が深まります。同書を手にお手持ちの実車写真を観察すれば新たな発見があるかもしれません。

排気管は他のIV号系列と同じく、筒型の消炎排気マフラーを採用してます。クルップ工場の筒型マフラーはIV号戦車J型とは長さが異なる上、排気管基部のカバー形状も異なります。ドラゴンのキットでは正確に違いを再現しています。また、44年12月から採用された強化型牽引具を装備しています。オストヴィント固有の特徴として、ジャッキ台、エンジン始動クランク、予備転輪がリアパネルに移動しています。

尾灯は角形と筒型のオプションが用意されています。ストックがあればどちらも使ったはずですが、クルップ工場では割と早い時期に筒型に切り替えていますので、オストヴィント用としては筒型の方が一般的だと思われます。誘導輪は、見本で付けた溶接型とオプションで用意されている鋳造型、どちらを付けてもおかしくないようです。末期のIV号突撃砲は溶接型が多いようですが、例外も存在します。

上部転輪は簡略化されながらも、中央にグリスニップルが残されたタイプで、これが省略されてしまっている末期ニーベルンゲン車体とは異なります。外周のリングが省略されたタイプは今のところクルップ工場製車体では確認出来ていないようです。サスペンション基部の中央ボルト2個は省略され、穴すら開けられていないタイプです。

車体側面前端にあった車体吊り下げフックはU字金具に変更され、場所も車体前面に移動しています。形状はふたつ用意されていますが、見本では唯一発見されているJ型車車体の新造車が装備しているのと同じにしてみました。牽引ロープ留め具はブレーキ点検ハッチ上に移動、ワイヤーカッター、ジャッキ等も移動し、C型シャックルの固定方向も変更されています。右フェンダーと車体を繋いでいたブリッジ状の補強金具が廃止されています。


向かって右がIV号戦車J型末期型。オストヴィントは操縦手/通信手ハッチの形状が異なり、フェンダーの滑り止めの面積が少なくなっています。一方、ブレーキ用の冷却口は簡易化されずに従来のままとなっています。

以上、非常に凝った考証が詰め込まれながら、非常に組みやすいキットで有り、初心者からマニアまで広くお勧めできる、素晴らしい製品になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2コマ目
誤)N26(N27)→正)D2(D4)

3コマ目
誤)S10→正)B24、誤)S9→正)B26

4コマ目
誤)S7→正)B29(B28)

5コマ目
オストヴィントでは右フェンダーと車体を繋いでいた橋のような形状の金具が廃止されています。図示が漏れていますが、ブレーキ点検パネルのある装甲板B6にモールドされている取付基部を削り落としておきます。

7コマ目
車体上部部品K1に開いている、上面のシュルツェン支持架用穴、左側面のクリーニングロッド取付用穴を埋めます。右側面のスコップ取付用の突起を削り取ります。

7コマ目
誤)G31→正)E14

7コマ目

9コマ目
ジャッキの取り付け図示が前後逆に表示されています(他のコマや塗装図が正しい)。

13コマ目
誤)Q44→正)Q52

14コマ目