サイバーホビー(緑箱) #6657 1/35 VK.4502(P)H

【実車について】
ドイツ軍はVK.4501計画により、戦車史上に「無敵」の名を刻むティーガーIを開発しましたが、フェルディナント・ポルシェ博士は更に強力な後継車を開発すべく、VK.4502計画を立ち上げました。4501より更に重装甲で、傾斜装甲を取り入れ、主砲には71口径8.8cm砲を搭載したこの戦車は、4501(P)と同じくモーター駆動により走行する計画でした。この巨体を制御するには当時のトランスミッション技術は限界であり、モーター駆動とすればトランスミッション自体が不要となり、容易に戦車を制御できると考えられたのです。自らの計画に自信を持っていたポルシェ博士は、既にデザインの終わった砲塔の先行量産を発注します。しかし、残念ながら発電に必要な出力を持つエンジンの開発が頓挫、戦局を考慮した陸軍はVK.4502計画を中止、VK.4503計画をヘンシェル社に指示します。4503は後にティーガーIIとなって量産され、既に量産されていたVK.4502用砲塔は「ポルシェ型砲塔」として初期生産分に使用されました。
4502計画においては、2つのデザインが提案され、伝統的な砲塔配置のデザインが「V」案、砲塔を後部に配置したデザインが「H」案として提出されました。H案はエレファントやマーダーIIIMのように機関部をミッドシップにしており、砲塔直下に余裕のあるスペースを設けることが出来る点が優れていました。一方、操縦席と車長席が隔離されてしまうことから、車内のコミュニケーションや非常時の要員交替には支障があり、それぞれに一長一短がありました。結局、4502計画ではV,H,両案とも車体は製造されず、幻の戦車となってしまったのです。
電気駆動戦車については、何かと揶揄の対象になりがちですが、現在でもディーゼル機関車の一部では同じ機構が採用されており、決して実用性の無いシステムではありません。同様の機構を採用したエレファントに関しても乗員の評判は悪い物では無く、保守的な構成で実用化されたティーガーIIはやはりトランスミッションのトラブルに苦しめられました。もし当時のドイツのエンジン技術(ベルサイユ条約により、第一次大戦後開発が封印されていたため、諸国よりも不利な立場にありました)がもう少し進んでいたなら、この方式もあながち非現実的な選択肢では無かった可能性もあります。少なくとも、誉エンジンに惚れ込んでしまい開発計画を大幅に誤った当時の日本はとやかく言える立場に無いでしょう。現在も、ポルシェ博士は自動車史に燦然と輝く存在で有り続けています。


【キットについて】
白箱として発売されたVK.4502(P)Vに続き、砲塔を後部に配置したVK.4502(P)Hです。キットは既に名作として定評のある、ティーガーIIのポルシェ砲塔とやはり非常に出来の良いエレファントから足回りを流用し、車体(上下)を新金型とした物です。実車については簡単な四面図が残っているだけですので、ドラゴンのデザイナーによりOVMやディティールが追加されていますが、そのまま組んで説得力のある同車が完成します。部品数も多くなく、3日もあれば十分で、手の早い方なら土日で完成させられるでしょう。

こうしてみると、ポルシェ砲塔は本車の車体デザインと良くマッチしていることが解ります。
履帯は十分な実感を持ったベルト履帯です。今回、長さはぴったりで、特にコマは詰めていません。

見本は「量産初期型」をイメージして製作し、砲塔上のピルツ(M4)およびキューポラの直接照準器(MA16)は取り付けませんでした。このため、砲塔前端左にある直接照準器の照星基部に当たる突起は削り取っています。これらのパーツは、もし本車が順調に量産された場合は、ほぼ確実に導入された装備でしょう(実車でも生き残ったポルシェ砲塔ティーガーIIはピルツと直接照準器を装備しています)。これに加え、キットには、ティーガーII試作車に見られるキューポラ直下の連絡ハッチ(ポルシェ砲塔の原デザインにはありましたが、試作段階で廃止され、溶接で塞がれています)跡用の部品としてエッチングでMA32を用意しています。

OVMに関しては他のドイツ戦車と同じく、生産途中で装備が追加されたり、配置が変更されていたであろうことは、ほぼ間違いがありません。本キットも不要部品として入っている砲塔側面の予備履帯ラック、C型シャックル、消火器、省略されているクリーニングロッドなど、自由に追加してみてはいかがでしょうか。

箱絵は「密かに製造されていた試作車がクンマースドルフの戦車試験場から引っ張り出され、ベルリン戦に投入された」と言った感じで、OVMは外れた状態で描かれています。何かと考証の堅苦しいドイツ戦車ですが、本キットは、気楽に作っても良いですし、あれこれ妄想を詰め込んで組んでも良い、自由度の高いキットに仕上がっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1コマ目 ボギー(B)と(C)はそれぞれ3組ずつ組みます。車体への取付は、左側面がB×2、C×1で、右側面がC×2、B×1となります。ダボに従えば逆には付かないようになっています。
5コマ目 A13とA14の図示が逆になっています。
8コマ目 MA32(オプション)の取付位置が左右逆です。箱の底のCGを参考に位置を決めます。実物にあるハッチ跡直前の尖頭ボルトのパーツは自作する必要があります。

その他、パーツの取付図示が抜けている部分が幾つかあるので以下に示します。