ドラゴン #6820 ティーガーI 第504重戦車大隊 "131" チュニジア

ティーガー131号車は、北アフリカに派遣された第504重戦車大隊の所属車両です。イギリス軍が初めて捕獲したティーガーで、イギリス軍は稼働状態に整備した後、徹底した試験を行い、ティーガーの全貌を明らかにしたのです。その後、131号車はボービントン戦車博物館のスタッフによって丁寧にレストアされ、可動状態で展示されており、毎年1回、観客を乗せてデモを行い、内外のファンに広く親しまれています。
2014年に日本で公開された映画「フューリー」では敵役として登場、シャーマンを圧倒して往年の無敵ぶりを窺わせる活躍をしました。まあ、最後にやられてしまうのはハリウッド映画ですからしょうが無いですね。映画を観たマニアの間で「ティーガーの車長、あいつはアホか」「オレが車長ならあんなマニューバー絶対やらんわ、イージーエイトごときにやられおって!そもそも、フューリー号、M4A3じゃないし!」と物議を醸しましたがそれは、また別の話(^^)


ティーガーは生産時期によって少しずつその姿を変えており、新型キューポラを搭載したタイプを「中期型」それ以前を「初期型」、鋼製転輪を装備したタイプを「後期型」と呼ぶのが一般的な習わしです。131号車は初期型に属するティーガーです。しかし実際の生産ラインでは戦訓に伴う装備の改良、廃止、新装備の導入を日々取り入れており、初期型と言っても生産途中で少しずつ姿を変えています。それを正確に再現するのは、よっぽどのマニアでなければ、なかなかできるものではありません。しかし、精密考証主義のドラゴンは、131号車(1943年2月生産車)の仕様を徹底検証し再現していますから、特に考証に詳しく無かったり、資料を持っていない方でも説明書通りに組めば131号車を再現する事が可能です。
(131号車の特徴については後ほどご説明します)

見本は131号車用のオプションパーツを選択し、同車が放棄された直後の状態をイメージして組み立ててみました。


しかし、このキットの本当の特徴は、幅広い時期の初期型を組む事が可能になっている点にあります。131号車特有の特徴を再現するパーツを選択せず「ノーマルな」ティーガーのオプションを選択して説明書通り組むと、1943年2月生産車が組めるようになっています。この時期の生産車は、極初期から初期に掛けての試行錯誤がようやく一段落し、仕様が固まりつつある時期のティーガーで、一般的なモデラーが持つティーガー初期型のイメージに最も近いと思われます。
見本では131号車仕様とすべくボッシュライトとSマインが付いていませんが、これらを取り付ける事ももちろん可能です。

更に、不要部品を使用することで、1943年3月生産車と4月半ばまでの生産車も組む事が可能です。また、予備履帯ラックを自前で用意すれば、4月いっぱいの生産車も組む事が可能です。また、普段からティーガー研究をされている方ならそれ以降、ティーガー初期型の末期型まで組む事もそんなに難しくはないでしょう。更に、シュテルンアンテナこそ入っていませんが、指揮型に組む事も可能です。説明書で直接触れられていないとはいえ、これまでにこれほどたくさんのオプションパーツの入った豪華な初期型キットは存在しませんでした。よく「ドラゴンのキットの不要パーツは、最初に切り取って棄てる」と書いている方がいますが、このキットでそんなことをするのは勿体ない!


131号車という大スターのタイトルを冠していることで誤解されがちですが、特定個体のみが再現できるのではなく、これひとつで様々な時期のティーガー初期型を組めるキットなのです。ティーガーが好きな方なら、複数ストックしておいても問題の無い、優れた仕様のキットです。
基礎設計は日本人設計チームが行い、その後の研究の進展に伴って判明した事実は、ティーガーを専門に研究している方が引き継いでいます。まさに現在考えられる最高の考証と金型技術が惜しげもなく投入されているのです。
初心者はストレートに組めば超高解像度のティーガーが完成し、マニアは日頃の研究成果を活かし自分だけの1台を完成させられるのが#6820です。


今回、ようやく頂部が2つに分かれた初期型ファイヘルフィルターのパーツが入りました。これは1942年11月生産車から本格的に導入されたパーツで(10月生産車にも先行導入された事例はある)、1943年3月に生産効率を上げるため頂部が一体になったものが導入されるまで使い続けられました。
キットには不要パーツとして、頂部一体型のファイヘルフィルターパーツも入っています。


ファイヘルフィルターは外気を濾過してエンジンの混合気用の清浄な空気を取り入れるためのものです。戦場の埃まみれの空気を吸うとエンジン出力が低下し、エンジンの寿命も短くなるため必要な装備でした。

しかし、実際に使ってみると、濾過器が被弾で簡単に用を成さなくなり、個体によっては取り外しているものも珍しくありません。エンジンを点検する際はまずこのフィルターパイプを取り外す必要があり、無用になったフィルターパイプは取りつけなくなったのだと思われます。濾過器自体も取り外してしまった個体も結構あります。
131号車も既に濾過器は若干損傷していますが、パイプが付いているところを見るとまだ使える状態だったようです。キットの塗装例2と3では取り外した状態に組むように指示されています。

非常に地味なところですが、ヴィットマンティーガーでは省略されていた、ファイヘルフィルターを支える金具のエッチングパーツ(MA8)が用意されています。ただ、このパーツは組立時に紛失しやすく、ちょっとした衝撃で簡単に取れてしまいますから、パーツを型紙にしてプラペーパーやケント紙などで作り直してしまうのがお薦めです。


ここからは131号車の特徴について見ていくことにします。

まず、捕獲直後の131号車は、左側のスモークディスチャージャーの一番上の発射筒が欠損しています(1)。これは131号車が生きているときの写真でも既に欠損しており、箱絵でもそのように描かれています。もちろん、工場出荷時には取りつけられていたと思われます。説明書では取りつけるように指示されていますのでお好みで。見本では取りつけダボを埋め、点火用コードの穴を開口してみました。
なお、弾体は、生きている131号車の写真では右の第2第3ランチャーにも装填されていますが、見本では箱絵を担当されたボルスタッド氏が描かれているとおり、左側第2だけ装填しました。
131号車はボッシュライトとSマインランチャーがいずれも台座ごと取り外され、(2)の位置にある電源コードの取付金具も外されています。俯角で射撃をする際、砲身と干渉することを嫌ったためのようで、一足先にアフリカで戦った501大隊から伝授されたようです。見本では取付金具のモールドを削り、取り付けダボも塞ぎました。このような場合、パテは使わない方が良く、見本ではダボ穴をピンバイスで貫通させた後、楔状に伸ばした伸ばしランナーを突っ込んで塞ぎ、台座のモールドごと模型用彫刻刀で削り落としました。この方が作業時間が短縮でき、かつ綺麗に仕上がります。
操縦手バイザー上に開いている二つの穴(3)が溶接で塞がれています。これは元々双眼式ペリスコープK.F.F.2を取り付ける為のものです。しかし、1943年2月生産車から、防御力の強化のため、廃止されました。しかし、生産ラインには取付用の穴が開いた装甲板がまだ残っており、これを溶接して塞ぐ処理が過渡的に行われました。131号車もこうした1台でした。前面装甲板E7は「穴を開けない」ことで、装甲板のストックが切り替わった後を再現できますし、1943年1月以前の生産車のため、ペリスコープが塞がれていないN6も用意されています。

(4)の取っ手と(5)の足掛けは今のところ131号車だけに見られる特徴です。巨大なティーガーに乗り組みやすいよう、乗員のリクエストで取りつけられたようです。他の個体を再現する場合は取りつけないよう注意します。
左側の第一転輪(6)は脱落しています。第一転輪は泥詰まりを起こしやすく、外している個体は珍しくありませんが、131号車の(放棄直後の)右側面の写真には第一転輪が付いており、131号車の場合、戦闘で脱落した可能性が高いと思われます。

マフラーカバーの上下の補強リブ(4箇所)は131号車の場合付いていませんので削り落とします。工場の記録では、円形のマフラーは生産第82号車から取り付けが始まったとあります。生産第122号車だった131号車に至るまでこうしたリブ無しマフラーカバーも使われていたのか、131号車のマフラーカバーが特製だったのか、今後の研究が待たれるところです。
なお、501大隊に見られる角張ったマフラーカバーは現地改修仕様で、今のところ501大隊以外では見ることができません(501大隊は生産第11号車から33号車までと59号車で構成されていたとされています)。

第131号車の最後の様子についても考察してみたいと思います。これは模型製作には直接関係ありませんので、考証に興味がある方だけご覧頂ければ幸いです。






















以前から指摘されていることですが、装填手ハッチのアームY2は少し短いようです。ランナーの平たい部分を継ぎ足してみました。装填手ハッチが垂直に立つようにするのが正解です。


ファイヘルフィルターの組立はこのキットの難関です。クミセツ通りの手順ではうまくいかないと思います。
手順の一例としてご参考になれば幸いです。
ここでは右側のフィルターを例にご説明します。クミセツの番号指示は間違っていませんが、ホースは左側が図示され、濾過機本体は右側が図示されるなど紛らわしいので、整理のため、図示します。
ファイヘルフィルターはリアパネル周りのパーツの最後に取りつけるよう指示されていますが、なるべく早い段階で取り付ける事をお勧めします。リアパネルのジャッキやマフラーはファイヘルフィルターの後で取りつけるとスムーズです。

1.V4+V15をK19を介して機関室ハッチに取りつけます。
2.濾過機本体(N7,MA7,N4,M3,M5,M6)を組み立て,車体に取りつけます。濾過器は水平でなく、車体後面装甲板に平行になるよう少し斜めに取りつけます。
※濾過器を取りつける金具MA8はまだ取りつけません。
3.M4とM7、M4とM10を接着します。V6とV7を接着。
4.V6+V7とW1との嵌合をチェックし、きついようなら調整しておきます。まだW1には接着しません。
4.十分に乾燥時間を取ります(ここ大事です)。

5.W2をV15に差し込みます。まだ接着しません。
6.M7に少しだけ接着剤を塗り、M6とW2に差し込みます。W2をゆっくり回転させ、折り合いが付く角度を探します。決まる角度は1点だけですが、必ずしっかり決まりますので、落ち着いて作業してください。
7.M6、M4、W2に接着剤をしっかり回し、十分に乾燥させます。
※濾過器は車体と接着面積がなく、模型としては濾過器はパイプで支える感じになりますので、しっかり接着することが重要です。

8.M10に少しだけ接着剤を塗り、M6に差し込みます。M4の上辺が水平になるよう調節します。
9.W1をM4に差し込みます。まだ接着しません。
10.W1をゆっくり回転し、うまくW2に寄り添い、かつ機関室ハッチの突起に乗っかる角度が見つかったら接着します。
11.V6+V7をW1に差し込みます。機関室の上の丸いパーツJ13と干渉しないよう角度を決めます。W1関連の全てのパーツに接着剤を回し、しっかり接着し、十分に乾燥させます。

12.MA8を取りつけます。